Artist in Residence Programアーティスト・イン・レジデンスプログラム

2014 レジデント・アーティスト

  1. セイット・バタル・クルト(オランダ)
  2. フロレンシア・ロドリゲス・ヒレス(アルゼンチン)
  3. コンスタンティノス・タリオティス(キプロス)

今年は、海外78か国・地域から640件の応募がありました。厳選なる審査の結果、セイット・バタル・クルト(オランダ)、フロレンシア・ロドリゲス・ヒレス(アルゼンチン)、コンスタンティノス・タリオティス(キプロス)を選出しました。3名のアーティストは、8月26日から12月3日までの100日間、茨城県守谷市のアーカススタジオで滞在制作を行います。

審査は、西川美穂子氏(2014年度ゲストキュレーター/東京都現代美術館 学芸員)、アブデラ・カルム氏(モロッコ/2014年度国際審査員/マトハフ・アラブ近代美術館ディレクター)、南條史生氏(アーカスプロジェクト アドヴァイザー/森美術館 館長)、アーカスプロジェクト実行委員会の協議のもと行いました。

2014年度の選考結果について

640と過去最高の応募総数があった本年、数が多い分、レベルにはばらつきがあったが、最終選考に残った11作家は誰が選ばれても問題がないと思わせる実力者ぞろいだった。このような応募者のレベルアップは、アーカスプロジェクトでのレジデンス経験後多くのアーティストが一層の活躍をしてきたこの20年間の成果といえるだろう。本年のレジデントとして選ばれた3名も国際的に活躍を始めたばかりの期待すべき力のある作家たちである。いずれも地域性や個人の経験や記憶、関心に依拠しながらも、グローバル社会の問題点をあぶり出す鋭さを持ち、守谷という郊外の街で何をどのように見出し、掘り下げるのか大変楽しみである。
西川美穂子(2014年度ゲストキュレーター)

2014 Resident Artist

セイット・バタル・クルトSeyit Battal Kurt

オランダ

 

1978年トルコ・アール生まれ、オランダ・ドルトレヒト在住。2005年ロイヤル・アカデミー・オブ・アート,デン・ハーグ彫刻科卒業。2010年サンドバーグ・インスティテュート(アムステルダム)修了。Now&After’14 インターナショナル・ビデオアート・フェスティバル(モスクワ, 2014)、第2回マルディン・ビエンナーレ(トルコ, 2012)、上海国際博覧会(上海, 2010)、第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ(イタリア, 2009)等への参加、キョンギ・クリエーション・センター(韓国, 2012)でのレジデンス等、国際的な活動を展開している。トークやレクチャー等も多数行う。

グローバル社会における人々の移動とそのアイデンティティの問題、人と自然の関係や食文化をテーマに、映像を用いた作品を制作している。かつての遊牧生活が失われ徐々に人々が去っていく生まれ故郷のトルコの村を取材した映像や韓国の食文化を描いた映像インスタレーションなどがある。

活動の様子

Shooting at Asano Farm

Shooting packaging of vegetables at Asano Farm

Documentation of plowing (Nishio Sachiyo’s farm)

Documentation of plowing (Nishio Sachiyo’s farm)

オープンスタジオ

Man and Earth
7-channel video installation

Still from Man and Earth

 

アーティスト・ステイトメント

守谷市周辺の自然環境の様々な側面について音とビデオで撮影します。また、農業に従事する年配の方々に、守谷での農業、歴史、暮らしについてのインタビューも行うつもりです。最終的には、この収集した音や映像を自然物や地域的なもの、神話的なものと組み合わせビデオインスタレーションを制作したいと思います。

審査員のコメント

作家の生まれ故郷であるクルド人の村を取材した映像では、母親がパンをつくる様子や家畜の出産に人々が立ちあう姿が淡々と映される。村に生まれながら、出稼ぎに出た父を追って少年時代にオランダにわたった作家は、内なる者であると同時に他者でもある。温かくも静かで鋭いまなざしが感じられる映像に大変魅力を感じた。産業形態の変化と流通の肥大化が全世界の食文化に影響を与える現在、均一化されつつある日本の食文化を彼がどのように見つめるのか楽しみである。(2014年度ゲストキュレーター 西川美穂子)

2014 Resident Artist

フロレンシア・ロドリゲス・ヒレスFlorencia Rodríguez Giles

アルゼンチン

 

1978年アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ、在住。2002年ブエノスアイレス国立芸術大学卒業。2010-12年にスカラシップを受け、トルクアト・ディ・テラ大学(ブエノスアイレス)にて視覚芸術におけるプロジェクトの分析および開発を学ぶ。主な展覧会に、「Círculos en movimiento」(MAMBA Museum of Modern Art of Buenos Aires, アルゼンチン, 2013)、「Il va se passer quelque chose」(Maison de l’Amérique Latine, パリ, 2012)などがある。日本での活動には、バッカーズ/エイトレジデンス・ プログラム(2009)、原美術館での「ホームアゲイン – Japanを体験した10人のアーティスト」(2012)への参加などがある。
絵画、インスタレーション、パフォーマンス、写真、映像と多彩なメディアを融合させた制作をおこなっている。夢や幻想といったものを通して、社会の中の儀礼や宗教的な習慣などの持つ意味を探求する。ラテンアメリカを中心に世界各地で活動している。

活動の様子

Meeting with prospective participants in the project

Drawing for Interzone

Facility tour at the production site of Yūki-tsumugi

Practice at Open Studios

オープンスタジオ

Interzone
Performance

 

 

アーティスト・ステイトメント

新しい物語をつくり、また集団での実践を行うために「夢のふるまい」についてのプロジェクトに取り組みます。夢は人の普段の生活のある一面を構成していますが、たいていは個人的なことであり、人びとの間の社会的な関係を築くような物語・現象とはかけ離れているものとして考えられがちです。このプロジェクトでは個々の夢を、集団的な文脈に持ち込み、異なる物語の連帯と変換することを試みます。

審査員のコメント

夢をテーマに絵画、パフォーマンス、舞台装置と展開する総合的な表現が独特で、ドローイングや舞台のための衣装などからは高い造形力が感じられる。前回の来日では舞踏家とのコラボレーションなど日本の伝統文化を吸収しその後の作品に反映させているが、より深い日本理解によってこれをさらに発展させられる可能性がある。アーカスでは広く市民と交流し夢の断片を集めたいとしており、ある共同体の中で無意識に共有されている文化が見出されることが期待できる。(2014年度ゲストキュレーター 西川美穂子)

2014 Resident Artist

コンスタンティノス・タリオティスConstantinos Taliotis

キプロス

 

1983年キプロス・ニコシア生まれ。2006年 ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン卒業。2008年ミドルセックス大学フィロソフィ・アンド・コンテンポラリー・クリティカル・セオリー修了。主な展覧会に、第55回ヴェネツィア・ビエンナーレ、キプロス・リトアニア館の展示に参加(イタリア, 2013)、「50 YEARS OF JAMES BOND AGAINST ARCHITECTURE」(パイロットギャラリー, イスタンブール, 2013)、「AFTERMATH」 (Akバンクセンター, イスタンブール, 2012) などがある。レジデンスプログラムでは 2014年にISCP(ニューヨーク)、2012年にクンストラーハウス・ベタニエン(ベルリン)に参加。
近代建築や映画についてのリサーチから出発し、写真や映像、インスタレーション、テキスト執筆・編集など多様な手法で新たな物語を編纂する。舞台デザインやアーティスティックディレクター等も手がける。

活動の様子

Warp Station Edo shot by the artist

The Imperial Hotel at the Museum Meiji-mura shot by the artist

Studies of house for pavilion/exhibition

Interview with Tokunaga Katsuhiko at Orchid Bar of Hotel Okura Tokyo before its demolition

オープンスタジオ

Frank
Plan, Drawings, CG animation, Model

 

 

アーティスト・ステイトメント

私は日本の近代建築の歴史、その流行と失敗にまつわる逸話についてリサーチします。加えて、サブカルチャーにおけるスピードと危険にまつわる用語にも興味があります。100日間のレジデンスにおいて、これらの謎、つまり速度と停滞を論点にリサーチをすすめます。

審査員のコメント

恐怖や暴力を予感させるB級映画のワンシーンのような写真作品や、完璧なのにどこか不穏な雰囲気の漂うモデルハウスのようなインスタレーションなど、彼の作品は一度見たら忘れられないような強い印象を残す。映画「007」の爆破シーンのみをつないだ映像も魅力的だった。建築や映画など、20世紀を象徴するモニュメンタルな要素から現代社会を分析する深い洞察力が感じられる。今回は車をモチーフに破壊とスピードについて考察したいとしており、グローバルなテーマが見え てきそうな期待がある。(2014年度ゲストキュレーター 西川美穂子)