アーカス・リサーチは、アーティスト、キュレーター、研究者、博士過程の学生、作家など、文化・芸術分野の実践者や専門家を対象に、創造的な実験やフィールドワーク、リサーチのための時間と環境を提供する自己主導型の短期レジデンスプログラムです。 アーカス・リサーチに参加することで、日本のアートシーンやあらゆる領域の研究施設とつながりながら、落ち着いた環境で自らの創作に打ち込むことができます。また本プログラムは、参加者にとって自らの活動を振り返り、思考を掘り下げる機会となる他、創造的なプロセスを育むためのプラットフォームになることでしょう。
アーカスプロジェクトは、過去 29 年間にわたり、レジデンスプログラムやラーニングプログラムをとおして、時間、 空間、活気あるコミュニティとのつながりを提供することで国内外のアーティストを支援するとともに、知識や 問題意識を広くアート界や市⺠社会と分かち合ってきました。これまで培った経験と文化的な資源を活かし、ア ーカス・リサーチという新たな枠組みにおいて、アーティストに限らない、文化、芸術分野のあらゆる実践者と協働するとともに、芸術の領域を横断する創作活動を支援してゆきます。
世界22カ国・地域より47件の応募があり、厳選なる審査の結果、5組のアーティストを選出しました。
レジデンス期間:2024年6月7日―7月6日
レジデンス期間:2024年7月10日―8月8日
カナダ
カナダのニューファンドランド・ラブラドール州を拠点に、現代美術を専門とするキュレーターおよびライターとして活動している。2022年からボナヴィスタ・ビエンナーレの芸術監督を務める。これまでにレミー・モダン(カナダ)やクリーブランド現代美術館(米国)でキュレーターを務めた。『CURA』や 『BlackFlash』、『Foam Magazine』、『frieze』などに執筆している。アーカスプロジェクトでは、海洋や海辺の生き方に関連する活動に取り組むアーティストをリサーチし、将来的なコラボレーションの可能性を探る。
www.rosebouthillier.com
ロシア/英国
アーティスト、リサーチャー。民俗学や民間伝承、魔術、儀式などに関心を持ち、アニメーションやインスタレーション、パフォーマンスが交差する領域で制作している。アニメーション作品は多数の国際映画祭で紹介され、イングランド芸術評議会や英国アカデミー賞などで評価されている。アーカスプロジェクトでは、男女二柱の祖神が祀られている筑波山における神事や、日本の神道の伝統とイギリスの民間伝承を結びつける遺物について調査し、2つの文化間、または広く人間の歴史の儀式的な慣習の共通点を紐解き制作に繋げる予定。
www.nicaharrison.com
ベルギー
ジェンダー、レズビアンのアイデンティティへの関心を背景にアートとエコロジーの領域において、アーティスト、ライター、研究者として活動する。2022年よりアントワープ王立芸術学院の芸術研究員として、アカデミー内にコミュニティガーデンを作り、学生とともにエコフェミニズムの実践をとおして生態系の回復に取り組む。2019年からは、元修道院の庭の再生を通じて、脱植民地主義やクィアネス、エコフェミニズム、気候変動といったテーマと植物学を結びつけるプロジェクト「Gesamthof」を実践している。アーカスプロジェクトでは、日本各地の庭園を訪れ、伝統的な園芸と現代の園芸の比較研究を行い、エコロジーについての対話を深める予定。
www.elinedeclercq.com
シンガポール
アーティスト。主に写真とアーティストブックをメディアとして用い、スローアートと言語に焦点をあて、儚いものや身体など、日常的な事象を題材とする。これまでに、マナ・コンテンポラリー(シカゴ)でのグループ展などに参加。オハイオ州立大学図書館やシカゴ美術館附属美術大学にあるアーティスト・ブック・コレクションに作品が収蔵されている。アーカスプロジェクトでは、アーティストブックの制作のために、潮の満ち引きと月の動きにまつわる時間の経験の調査、日本の俳句に関する文献の調査、月や潮の観察記録などをまとめ、波のフォトグラムを制作する予定。
www.angelicaong.art
オランダ
写真: Adriaan van der Ploeg
パフォーマンス、映像、リサーチ、執筆を通じて、建築デザイン、政治、社会の交点を考察する。美術と建築の理論から影響を受け、両分野の言語や美学を行き来する作品を制作している。特に1950年代以降の建築に興味を持ち、建築やその計画に組み込まれたイデオロギーに焦点をあてながら領域横断的なリサーチを行っている。これまでに、De AppelやKunstinstituut Melly(オランダ)、Extra City Kunsthal(ベルギー)、Kunsthalle Basel (スイス) 、Centre Culturel Suisse (フランス)といった美術館やアートセンターで発表している。アーカスプロジェクトでは、つくば研究学園都市を題材に都市計画とユートピア思想の関係について、インタビューや現地調査に取り組む予定。
www.michielhuijben.nl
世界18カ国・地域より31件の応募があり、厳選なる審査の結果、4組のアーティストを選出しました。
レジデンス期間:2023年6月9日―7月8日
レジデンス期間:2023年6月9日―7月8日
メキシコ
建築家、アーティスト。アメリカス・プエブラ大学で建築デザインと建築史、理論を教える。19世紀から20世紀にかけての建築史を紐解きながら、インテリアデザインと自然景観の関係を追究し、音を使った創作活動を行なっている。メキシコ芸術文化基金の支援を受け、Art OMI(ニューヨーク)やAramauca Contemporary Arts Platform (メキシコ、チアパス)での講演や作品の発表を行っている。アーカスプロジェクトでは、室内における自然景観の描写をテーマにしたサウンドアート、デザインの制作のための調査を行う予定。
http://ericomarcamarena.info/
フランス
アーティスト。人工的なモノや自然界にあるファウンドオブジェクトなどを組み合わせ、儀式や神話、夢、宇宙進化論といったテーマを題材に、彫刻やドローイング、コスチューム、インスタレーション、パフォーマンスを制作している。近年の活動には、ポンピィドゥー・センター(パリ)やMO.CO.アートセンター(フランス、モンペリエ)などでのパフォーマンスがある。2018年から2019年にかけ、MO.CO.アートセンターのプログラムの一環で、インドとトルコのレジデンスプログラムに参加。アーカスプロジェクトでは「鬼婆」の伝説に着目し、福島県の安達ヶ原や、つくばの研究機関などを訪れ、睡眠と夢の関係について調査を行う予定。
https://www.chloeviton.fr
フランス
The Center for the Sociology of Innovation (CSI)の博士候補生、研究者、アーティスト。アートや都市計画や環境学、社会科学といった、人間と非人間生存条件に着目し、領域横断的な活動を行っている。パリにある都市デザインの研究機関、PAC-STREAMの研究員であり、持続可能な自然エネルギーや環境保護に関するコンサルタントをしている。過去には、フランスの外務省が推進する《Green Embassy》プロジェクトに携わった経歴をもつ。アーカスプロジェクトでは、日本の都市計画を生物多様性という枠組みから調査し、都市空間デザインの実践に繋げる予定。
https://www.instagram.com/leonalix_ma/
英国 / フランス
アーティスト、研究者。シェフィールド・ハラム大学理学部(英国)のリサーチアシスタントとして従事している。バイオテクノロジーと遺伝学、人間と非人間の関係を軸に、科学者とのコラボレーションによるリサーチをベースに、写真と映像を組み合わせた作品を制作している。近年は汚染物質やウィルスが、人体と社会に及ぼす影響に焦点をあて、Epidermotopia(パリ)やNEW NOW Festival(ドイツ、エッセン)、Giudecca Art District(ヴェネツィア)などで展示やレクチャーを行う。アーカスプロジェクトでは、夫の欲が原因で妖怪になった「二口女」を題材としたプロジェクト《Becoming Futakuchi-Onna》のための調査に取り組み、民話と現代社会との繋がりを探るとともに、現代の女性性を考察する。
世界22カ国・地域より41件の応募があり、厳選なる審査の結果、2組のアーティストを選出しました。
米国
グラフィック・デザイナー。セントルイス・ワシントン大学でデザイン学科学部長を務める。グラフィック・デザインの歴史を紐解きながらそれが政治・経済・技術的な文脈から生まれ、実質的に社会に与える影響について研究し執筆活動行なっている。主な著書に『Collective Authorship and Shared Process: the Madame Binh Graphics Collective』(プリンストン・アーキテクチュラルプレス、2020年)などがある。グラフィックデザインの優れた功績に贈られるSECACやアメリカン・グラフィックデザイン賞などを受賞。アーカスプロジェクトでは、2025年に出版予定の書籍に関連する、日本のグラフィック・デザインや版画の歴史について調査を行った。
https://aggietoppins.com
フランス/ブラジル
パリ拠点のアーティスト兼映像作家。神話や歴史、植民地、災害をテーマに、映像、インスタレーション、文字を使ったパフォーマンスなどの作品を制作する。近年では、恵比寿映像祭(東京)、テート・モダン(ロンドン)、ジュ・ド・ポーム国立美術館(パリ)、LUX Moving Images (ロンドン)、ニューヨーク映画祭(プロジェクション部門)、TIFF ウェーヴレングス(カナダ)、BFI (英国映画協会)、シネマ・ドゥ・リール(パリ)などで作品が上映されている。アーカスプロジェクトでは、「再生と災害」をテーマにした映像作品《The Voyage Out》の完成に向け、調査や撮影に取り組んだ。2013年に小笠原諸島付近で海底火山が噴火した際にできた新島と、廃炉となった福島第一原子力発電所に焦点をあてた本作は、6年間の制作期間を経て2022年にパレ・ド・トーキョー(パリ)で公開された。
https://www.vimeo.com/anavaz