

アーカス・リサーチは、アーティスト、キュレーター、研究者、博士過程の学生、作家など、文化・芸術分野の実践者や専門家を対象に、創造的な実験やフィールドワーク、リサーチのための時間と環境を提供する自己主導型の短期レジデンスプログラムです。 アーカス・リサーチに参加することで、日本のアートシーンやあらゆる領域の研究施設とつながりながら、落ち着いた環境で自らの創作に打ち込むことができます。また本プログラムは、参加者にとって自らの活動を振り返り、思考を掘り下げる機会となる他、創造的なプロセスを育むためのプラットフォームになることでしょう。
アーカスプロジェクトは、過去 30 年間にわたり、レジデンスプログラムやラーニングプログラムをとおして、時間、 空間、活気あるコミュニティとのつながりを提供することで国内外のアーティストを支援するとともに、知識や 問題意識を広くアート界や市⺠社会と分かち合ってきました。これまで培った経験と文化的な資源を活かし、ア ーカス・リサーチという新たな枠組みにおいて、アーティストに限らない、文化、芸術分野のあらゆる実践者と協働するとともに、芸術の領域を横断する創作活動を支援してゆきます。
世界22カ国・地域より33件の応募があり、厳選なる審査の結果、5組のアーティストを選出しました。
レジデンス期間:2025年6月6日―8月8日
レジデンス期間:2025年6月6日―7月5日
レジデンス期間:2025年7月10日―8月8日
世界25カ国・地域より40件の応募があり、厳選なる審査の結果、6組のアーティストを選出しました。
レジデンス期間:2025年12月5日―12月19日
レジデンス期間:2026年1月15日―2月13日
カナダ
Photo: Bryce Krynski
生態系の危機の時代における人間と非人間の存在との結びつきを考察するアーティスト、教育者。現在、アルバータ芸術大学准教授。カナダのモーキンスツィス(カルガリー)を拠点に、これまでにドイツ、香港、ベルギー、ルーマニア、アルゼンチン、トルコ、コロンビア、メキシコ、アメリカ、そしてカナダのギャラリーやフェスティバルで上映や展示を行う。アーカスプロジェクトでは、ニホンミツバチと非社会性蜂、在来種に焦点を当て、異種間コミュニケーションの可能性ついて調査し、人間中心的な視点に問いを投げかけ、生態系の相互依存関係を理解するための道筋を提示する。
www.alanabartol.com
米国
テキサス州サンアントニオ在住 。家族やジェンダーに関心を持ち、ビデオや彫刻、インスタレーション、パフォーマンスを用いて制作するアーティスト。現在、テキサス州立大学教授。近年の作品は、MASS MoCAやBemis Center for Contemporary Art、Crystal Bridges Museum、The Drawing Centerといった美術館やアートセンターでの展示に加え、グッゲンハイム・フェローシップやジョアン・ミッチェルグラントを受賞。クンストラーハウス・ベタニエンやYaddo、MacDowellなどのレジデンスプログラムに参加する。アーカスプロジェクトでは舞踏と具体について調べ、アニメーションを取り入れたビデオ作品を制作する。
www.joeyfauerso.com
シンガポール
記憶やアイデンティティ、トラウマ、ストーリーテリングをテーマとするフィクション、ノンフィクション作家。著書にエッセイ集『The Inventors』(Rosetta Cultures、2023年)、『Tenderly, Tenderly』(Atomic Bohemian、2024年)、短編小説集『Minor Illusions』(Querencia Press、近刊)がある。『Australian Book Review』のCalibre Essay PrizeおよびElizabeth Jolley Short Story Prize、『The Georgia Review』散文部門の最終候補に選出される。2024年にアイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラムに参加。アーカスプロジェクトでは、日本映画に焦点を当てた文学作品のリサーチとフィールドワークを行う予定。作家やアーティストと関わりながら、ハイブリッドの可能性を探るこのプロジェクトは、映画史、記憶、翻訳といったテーマを探求する。
インド
インド国立デザイン学院を卒業後、展示デザイナーとして、劇場や美術館、ギャラリーなどで活動し、主に空間設計、インスタレーション、写真、出版デザインなど幅広い表現活動を行う。2021年に、Around The Sufrahを共同で立ち上げ、口承による語りや記憶、料理の実践を通じて、インドのケララ州におけるムスリム女性たちの物語を記録する活動を展開している。20世紀初頭に書かれたムスリム女性の著作のデジタル・アーカイブ化にも取り組んでおり、Sher-Gil Sundaram Arts FoundationやAsia Art Archiveから助成を受ける。2024年に、インド芸術財団の研究助成を受け、アーカイブ資料に基づく展覧会『Reading Rumours』を共同企画する。アーカスプロジェクトでは、日本のファッション・ムーブメントの文脈に位置づけられている絣の進化について、文化的、社会的側面からリサーチをする予定。
カナダ
Photo: Kato Hajime
テキサス州サンアントニオを拠点とし、写真およびレンズを用いたメディアを主な手法とするアーティスト、教育者。写真表現におけるヨーロッパ中心的な視座を再考し、「見ること」から逸脱したカメラの言語を問い直す中で、視覚中心主義の脱構築を試みる実践をしている。これまでに、ソウル市立美術館、De Appel、仁川アートプラットフォーム、Banff Centre for Arts and Creativityといったアジア、北米、ヨーロッパにある美術館やアートセンターで展覧会を開催。PARADISE AIR、ソウル市立美術館、仁川アートプラットフォーム、Banff Centreのレジデンスプログラムに参加。アーカスプロジェクトでは、移住における「移動」と「停滞」に関するリサーチの一環として、通常写真ではタブーとされている「折り目(fold)」という要素とイメージの関係を探求し、作品へと展開する予定。
www.minwlee.com
米国/リトアニア
アーティスト、キュレーター、ライター、アートコンサルタント。シカゴ出身で、現在はリトアニアのヴィリニュスにあるRupertでレジデンスおよびパブリックプログラムのキュレーターを務める。2014年より流動的なプラットフォーム「Syndicate」としても活動しており、長期のコラボレーターとともに、展示、イベント、出版物の制作なども手掛けている。目に見えない労働やサービス経済への関心が、個人、発案者、起業家、被雇用者としての自身のキャリアにも反映されている。アーカス・リサーチでは、近刊の書籍のためにインタビューやエッセイをまとめる。また、建築物等におけるアダプティブリユース(適応型再利用)に関するリサーチにも取り組む予定。
www.jlmurtaugh.com/syndkt.com
オーストラリア
Photo: Rhett Hammerton
オーストラリアのブリスベンを拠点に活動するキュレーター、ライター。現在、「海洋」に焦点を当てた学際的な議論に注目しており、アーティストや科学者と連携しながら、海洋空間における心理社会的、政治的、ジェンダー的な側面をリサーチしている。現在、クイーンズランド大学美術館のディレクター兼シニア・キュレーター。以前には、Banff Centre for Arts and Creativity Walter Phillips Gallery(カナダ)のプログラムBanff International Curatorial Instituteにおける「Visual Arts Residencies and Curator」のディレクター兼キュレーターを務めた。アーカス・リサーチでは、数年にわたる共同プロジェクト『Blue Assembly』出版のための、日本の現代アートとキュレーションのモデルに注目したリサーチを行う予定。
www.petarake.com
ポーランド/スペイン
バルセロナを拠点に活動するポーランドのアーティスト。版画、陶芸、インスタレーション、写真作品などを手がける。自然の形態をモチーフにしたその作品は、エコロジー、資本主義、社会規範、異なる種による共同体の洞察に基づいている。これまでに、スカルプチャーセンター(ニューヨーク)や、LAZNIA Centre for Contemporary Art(ポーランド、グダニスク)、Arsenal Municipal Gallery(ポーランド、ポズナン)などで作品を発表している。アーカス・リサーチでは、染料としての紅花の文化的、社会的、政治的背景の調査と裁縫のワークショップを組み合わせたプロジェクトに取り組む予定。
https://www.karolinawysocka.com/
ポルトガル
ペドロ・バティスタは絵画作品において、直感的な制作プロセスにより、色、形、光を通して感情の状態を探求する。ある像が文化的な差異を超越して共通の意味をもつ可能性や、絵画を動的なものとして捉えることに関心がある。これまでに、リスボンの自然史科学博物館やThe Portuguese Communications Foundationでの展示や、レジデンスプログラムへ参加し、絵画と物質性へのアプローチを広げてきた。アーカス・リサーチでは、存在と不在の対比をテーマに、絵画を通して時間、記憶、知覚が視覚言語にどのような影響を与えるかを模索する。
www.pedrobatista.com
スウェーデン
主に短編映画やビデオ・インスタレーションを手がけるアーティスト。異なる場所や時代から集めた素材やストーリーを織り交ぜ、それらの間に新たな空間を生み出す。架空のシナリオをドキュメンタリーやアーカイブの素材と組み合わせ、ビデオ、彫刻、版画、サウンドを統合したインスタレーションを制作している。2021年Edstrandska財団スカラーシップ受賞。2023年にはIASPIS(スウェーデン、ストックホルム)のレジデンシープログラムに参加している。アーカス・リサーチでは、折り紙や凧のかたちに着目した新しい映画の素材を集める予定。映画では、折り紙や凧のかたちを、生と死、種の絶滅、特定の状態から逃れることを象徴するものとして扱う。
www.lenabergendahl.se
スウェーデン
写真、サウンド、インスタレーション、執筆など、さまざまな手法を用いて思索と循環の概念を追求する。身体と建築物の間の力関係の形成に関心を持つ。これまで、2020-2022年にはマルメの展示プラットフォーム「キャノピー(Canopy)」の共同創設者兼コーディネーターを務めた。アーカス・リサーチでは、これまで取り組んできた環境音楽と日本の実験音楽の歴史についてのリサーチをさらに深める。アーカイブ調査、フィールドレコーディング、信号処理、生成型のサウンドインスタレーションなどを通して、音響デザインと商業的なイデオロギーがどのように絡み合い、政治的構想を反映しているかを探る。
https://tenderassets.com/