オル太 / OLTA

Photo: Shingo Kanagawa

  • 招聘年2020年度レジデント・アーティスト
  • 出身1983-88年日本生まれ
  • 国籍 日本
  • 招聘期間 2020年9月24日-12月17日(85日)
  • ウェブサイトhttps://olta.jp/
滞在制作にあたって

移動可能な自作の家を建て、土や農耕との関係から、人が生きることを問う作品《耕す家》を実施するために、作物を育てることに適した土壌環境や不耕起栽培などについてリサーチを行った。多木浩二は『生きられた家』で、家が時間のかたちであり、人間によって生命を持つと同時に腐敗していくと述べている。仮設小屋にトイレと三段ベッドという家としての最低限の要素を持つ《耕す家》は、建材に生えるカビや錆び、ハエ、コンポストトイレを分解するバクテリア、腐敗するものと同居し、生きる家である。現代の住居では、地中や壁の中に埋まっているはずのパイプラインの機能が剥き出しとなる《耕す家》で、そこで営まれる自然のプロセスからどのような芸術活動を行うことができるのかを思考する。

まず、どのような自然環境が《耕す家》での耕作と生活、制作に適しているかを知るために、環境地水学の専門家の宮崎毅さんとプロジェクト候補地を巡り、その場所の土壌や農業への適性について話を聞いた。守谷は中央に猿島台地があり、利根川、小貝川、鬼怒川につながる低地は、谷戸と呼ばれる小さな谷をつくる。また、土壌は常総粘土とその上に蓄積する火山灰土壌からできている。視察した谷戸の廃田では、日光が竹藪でさえぎられ、山から流れてくる水で上層にある肥沃な火山灰土壌が流出してしまっていた。そのような土壌環境は、作物の育成には適さず、生活においても、日照や水捌けなど、同様の問題点があるのでその土地に住むのは難しいと判断し、ある程度日当たりの良い土地を探すことにした。

そして、守谷のジーバナ農園で農業体験を行った。ここでは、耕作地での栽培と共に固定種の収穫や種の自家採取、不耕起栽培も試みられている。不耕起栽培とは、土を掘り起こさずに作物を育て、土壌の生態系を維持する農法である。また、敷地にある林には竹でつくられたアスレチックやピザなどを焼くことのできる手製の窯があり、人々と協同した遊び場が展開されていた。ここでは、土地や耕作をめぐる長期的な循環に合わせた農業のあり方やそのかたわらでの遊びを通じた共同体のあり方を学んだ。

さらに、不耕起栽培についてより深く知るため、土壌生態学研究者の金子信博さんに会いに、福島県二本松市を訪れた。そして、土壌の質を高めるために堆肥によって土の栄養分を豊かにしていることを知った。堆肥は、もみ殻とおが粉、米ぬか、落ち葉、土など農家で手に入る材料を用いて、発酵させたものだ。そして、ここでもそのつくり方を地域の人々と共有するというゆるやかな共同体が形作られていた。

以前は、「耕す」事で土や芸術が豊かになると考えていたが、腐敗、治水、土壌の生態系について学び、耕さないことがより土を豊かにすると知った今、環境の変化や土地の形勢などに影響される農業に芸術の視点から取り組むことで何が見えてくるのか、土の上に立ちながら制作を通して向き合っていきたい。

2009年に東京で結成された、6人組のアーティスト集団。これまでに、ゲームや祭りなど、特定の共同体において見られる集団的な行為とそこで繰り広げられるコミュニケーションに着目し、それらを再編・再演する作品 《超衆芸術 スタンドプレー》や《TRANSMISSION PANG PANG》などを手がけてきた。また、近年の作品《耕す家》は、不耕作地に建てたポータブルな家を拠点に、耕作と制作を行うというものだ。オル太の制作は、さまざまな共同体の基盤を揺さぶり、それを支えている思考や慣習、言語、生活様式を浮かび上がらせる。

[主な展示・活動歴]
2020 「超衆芸術 スタンドプレー」ロームシアター京都×京都芸術センター U35創造支援プログラム “KIPPU”
2019 青森EARTH2019「いのち耕す場所ー農業がひらくアートの未来」青森県立美術館
2016 釡山ビエンナーレ2016「Hybridizing Earth Discussing Multitude」韓国
2014 SeMA Nanji Residency, ソウル, 韓国
2013 「内臓感覚ー遠クテ近イ生ノ声」金沢21世紀美術館, 石川

選考理由
アーカスプロジェクトでは、《耕す家》を制作する。守谷市内の土地に、ポータブルな母屋とトイレを建て、母屋にはメンバーが入れ替わり住みながら不耕作地を耕し、トイレはコンポストトイレを採用することにより便と生ごみを肥料に変える。生きながら、日々気づきや知恵を得て、さらにそれらを活かして再び生きる。オンラインのリサーチにおいては、我が国の近代化と農業の関係に関する運動や史実に着目し、自らの活動について批判的な検証も試みる。自然に対峙するのではなく、自然に浸りながらアーティストも土地も生成に開かれていることが、気候変動やコロナ禍に向き合う困難な時代において有益な視点や生きるための方法論をもたらすことだろう。

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2020

イエヴァ・ラウドゥセパ〈ラトビア〉

ミロナリウ[クロディアナ・ミローナ&ユァン・チュン・リウ]〈アルバニア/台湾〉

オル太〈日本〉