イリカ・ファン・ローン / Erica van Loon

  • 招聘年2018年度レジデント・アーティスト
  • 出身1978年オランダ生まれ
  • 国籍オランダ
  • ウェブサイトhttp://www.ericavanloon.nl/
滞在制作にあたって

《最も長い波に乗って》

《最も長い波に乗って》は、人間と人間以外の存在の身体的な動きを関連付けることによって成り立つ生態系を取り巻く概念を反映している。特に焦点を当てたのは循環する性質を持つ動きだ。例えば、スロー地震*がいかに人間には感じ取れないような地震波を地球全体に送っているか—あまりにも低い周波数なので山にドリルで穴を掘らなければ観測できないほどだー、合気道の螺旋を描き包含する動き(理論としても実践としても)、熱帯に生い茂る木々の上方に生息する蟻、その蟻が習得した地面に衝突することなく落ちる技術。そういったことについて考えてみよう。

このプロジェクトは、アーカスプロジェクトでの滞在と、来日直前に参加したブラジル、アマゾンでのLabverde Arts Immersion Programで集めたインプットから構成されている。今回制作したヴィデオ・インスタレーションは、地球上で正反対に位置する2つの地で刺激を受けてできたイメージ、テキスト、サウンドを組み合わせたものである。

私のリサーチそのものも言ってみれば身体的なものであった。熱帯雨林の真ん中で汗をかきながら、あるいは道場の畳の上でトレーニングしながら、あるいはまた神聖な山に登りながら、レクチャーを受け撮影したのだ。インスタレーションは、来場者にも身体感覚を介した鑑賞を促すものとなるだろう。

*スロー地震
近年発見された、プレート間のずれがゆっくりと引き起こされる地震。その長さは数年単位にも及ぶことがある。

1978年、オランダ、メッペル生まれ。アムステルダム在住。アルテズ美術大学(カンペン)で建築デザインを学び、ヘリット・リートフェルト・アカデミー(アムステルダム)、デ・アトリエ(アムステルダム)でアートを学ぶ。 カナダ、スイス、アメリカなどでレジデンシープログラムに参加。人間と地球との身体的つながり、また、目に見えなかったり間接的にしか感じることのできなかったりする地球内部の活動と、人間の無意識のつながりに関心を持ち、これまでサウンド、映像、写真、またそれらを組み合わせたインスタレーションとして作品を制作、発表してきた。作品では、反復するアクションやリズムを用いることで観る者の知覚を高め、地球の生態系と人間の身体の内部とのつながりを見つける能力を強めるような効果をねらう。

[主な展示・活動歴]
2018 ‘LABVERDE - Arts Immersion Program in the Amazon', Adolpho Ducke Forest Reserve, マナウス, ブラジル
2017 ‘Helicotrema - Recorded Audio Festival', Palazzo Grassi, ヴェニス, イタリア
2017 ‘2017 Site-Responsive Art Residency & Biennale', I-Park Foundation, イースト・ハダム, コネチカット州, 米国
2016 ‘Breakfast Show', puntWG, アムステルダム, オランダ
2016 ‘Mano Y Mano', Kunsthuis SYB at Intersections - Art Rotterdam, ロッテルダム, オランダ

選考理由
地質学者や解剖学者のインタビューを作品に取り入れ、科学的な視点と自然環境から得る視覚的、聴覚的な要素、またメタファーを組み合わせることにより、ホリスティックな世界観を表現する。その独特な手法に新鮮さを感じた。今回のプロポーザルは、地球と人間のカップルセラピーをテーマに、茨城の自然をリサーチし作品を作るというもので、地域コミュニティを含んだ周辺環境とのクリエイティブなコミュニケーションが成立することを期待したい。その“コミュニケーション”の形は、私たちが想像しえなかったものになるのかもしれない。
 

オープンスタジオによせて
人間と地球の身体的なつながりに強い関心を持つイリカ・ファン・ローンは、日本滞在中にいくつかの異なるトピックに興味を持ち、それぞれの調査を並行して行っていました。そのうちの1つが合気道です。実際に合気道の教室にも通い、その動きを体験しました。合気道では、攻撃をしかけてきた相手の力を利用して身を守ります。「相手の動きのリズムと意図を変更することで、相手と互いに調和する」という考え方に感銘を受けたとファン・ローンは言います。また、東京では地震の研究者に会い、数日から数ヶ月、あるいは数年という長い時間をかけて発生する「スロー地震」について話を聞きました。これは、事実、今回の滞在中に体験した地震がファン・ローンにとって初めての地震であったこととも関連しています。同時に、来日の直前に訪れていたアマゾンで知った、ある蟻(Cephalotes atratus︎)についても文献を読み込みました。この蟻は生涯木の上で生活し、木から落ちそうになると、体を反らせて滑空し、木の幹に向かって飛ぶのだそうです。
この蟻の所作と、合気道での手を回転させるような動き、また地球全体に広がるスロー地震などを題材に、映像と音声を制作し、ヴィデオ・インスタレーションを作り出します。彼女の試みは、生態系、あるいはものごとが繋がり回流することについての、科学的で身体的な思考と体験の成果を見せています。

金澤 韻

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2018

ジハド・ジャネル〈トルコ〉

エリカ・セルジ〈米国〉

イリカ・ファン・ローン〈オランダ〉