フリエッタ・アギナコ&サラ・ドゥムーン / Julieta Aguinaco & Sarah Demoen

  • 招聘年2017年度レジデント・アーティスト
  • 出身1983年メキシコ生まれ / 1984年ベルギー生まれ
  • 国籍メキシコ / ベルギー
  • 招聘期間2017年8月25日-12月12日(110日)
  • ウェブサイトフリエッタ・アギナコ http://julietaaguinaco.com
  • サラ・ドゥムーン http://www.threeowlsonachestofdrawers.net
滞在制作にあたって

《地球に向き合う。情報に向き合う。私たちの生活と向き合う。》

ある場所を表象するとはどういうことか、特に植民地化せずに利根川を表象するとは?
これが守谷を流れる利根川をリサーチする上で、中核をなす私たちの問いです。「なぜ利根川なのか?」と聞く人もいるかもしれません。「あなたの母国に利根川と同じくらい退屈か、あるいは壮観な川はないの?」と。もっともな問いでしょう。このプロジェクトのきっかけは必ずしも利根川それ自体にはありません。ある意味私たちは、何の縁もない土地を訪問者が訪れ、結果的にその場所を表象しようとする問題を扱うために利根川を利用したのです。

レクチャーパフォーマンスでは科学的、社会的、個人的視点から集められた資料を元に、それらが拡大を続ける収集過程に集束されていくとき、植民地化を伴わない表象が可能かかということを問いかけます。この行為には終わりがありません。ゆえに私たちは、オープンスタジオ期間中来場者の声と解釈を収集し続けます。パフォーマンス後に、観客からの意見、批評、利根川についての知識を共有する機会を設けます。これらのコメントは翌日以降のパフォーマンスに反映されます。

1983年メキシコ、メキシコシティ生まれのアギナコと1984年ベルギー、トゥルンハウト生まれのドゥムーンはともに、2015年オランダのダッチ・アート・インスティテュートで美術修士課程を修了。以来、ソロ・アーティストとしての活動と並行しながら、メキシコとオランダ、ベルギーという別々の国を拠点としつつも共同制作を行っている。言語、社会空間における発話や人間の認知などに興味を持ち、フィールドワークを含めたリサーチを基に、映像、パフォーマンス、インスタレーションなどを制作する。

[主な展示・活動歴]

2017 Rabbit Island Residency. Rabbit Island, ミシガン, 米国
2016 “Those Quiet Men Who Always Stand On Piers…”, Altiplano Art Space, メキシコシティ, メキシコ
2015 “The Limits of My World”, ABC Art Berlin Contemporary, ベルリン, ドイツ
2015 “The Limits of My Language”, Dutch Art Institute (DAI) Showroom, Arnhem, アーネム, オランダ
2015 “From One Thing to Something Else”, Collaboration with Ben Burtenshaw, DAI & Casa do Povo, サンパウロ, ブラジル

選考理由
アーカスプロジェクトでのレジデンスのためのプロポーザルは、利根川とその流域の人々との関係の歴史に着目し、犬吠埼までフィールドワークを行って物語を創作するというもので、応募のためにきちんとリサーチをしている姿勢に好感が持てた。最終審査のために制作してもらった2分間の自己紹介ビデオは、本人たちの紹介からアーカスプロジェクトでの活動プロポーザルまでをきちんと織り込みつつも、ポエティックな要素や言葉遊びも交えてあり、良く練れていた。


オープンスタジオに寄せて
アギナコとドゥムーンはソロ活動と並行しながら共同制作を行う。言語、社会空間における発話や人間の認知などに興味を持ち、フィールドワークを含めたリサーチを基に作品を制作する。

彼女らは、アメリカ人の作家と科学者が1940 年にカリフォルニア湾で行った海洋生物標本の収集旅行を模倣/再現し、2016年に同湾の各地を訪れた。客観性を欠く1940 年の調査同様に、彼女たちの調査も主観性と偶然性に頼るもので、アーティストならではのリサーチといえる。また、作家自身が招かれざる訪問者であるということを、今日当地で観光開発を進める外部からの植民者としての不動産企業に重ね合わせた。そして、疑似科学的なもの、経済的利益となるものと、アートとを対比し、土地や景観を搾取的に利用する意味を問いかけた。

今回の滞在では、守谷から犬吠埼まで利根川沿岸部のフィールドワークを行った。江戸・明治時代の蘭学技術を用いた利根川の改良工事や水域の歴史的変遷を1つの軸に調査は進められたが、過去のリサーチと同様にネネコと呼ばれる河童や、タナゴ、伊能忠敬に関する資料などといった雑多な発見をした。オープンスタジオではこれらが織り込まれたレクチャー・パフォーマンスを発表する。

彼女たちはフィールドワークを通じ、過剰なまでの情報収集を行う。偶然により、彼女たちは新しい知識や思考を得て、少しずつ変化していく。それは複数の言語が混合しハイブリッド化することと似ている。さらには、川と川が合流し水が混じり、その川自体も時間を経て形を変える、川の変遷にも例えられるのである。

近藤健一

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2017

フリエッタ・アギナコ&サラ・ドゥムーン〈メキシコ&ベルギー〉

ダニエル・ニコラエ・ジャモ〈ルーマニア〉

カーティス・タム〈米国〉