カーティス・タム / Curtis Tamm

  • 招聘年2017年度レジデント・アーティスト
  • 出身1987年米国生まれ
  • 国籍米国
  • 招聘期間2017年8月25日-12月12日(110日)
  • ウェブサイトhttp://curtistamm.net/
滞在制作にあたって

私は日本での地震に関するプロジェクトとして、《細胞調律センター》というサウンド・ライブラリーを発展させました。アクシデントはシステムを超えたところに発生する形であるという考え方を元に、《細胞調律センター》は地震現象との関係性を再考することに興味がある方に、親密でかつ方向感覚を狂わせるような「体験型レクチャー」を提供します。

このプロジェクトではそのリゾーム(根茎)において、音を本質的にフラクタルな現象として捉えることにより、大規模な地震現象を最小のノイズと音波を通してでさえも身体的に体験できると考えます。

街のサイレンの設備を警告のために利用するだけではなく、集中して聴くという行為のためにも応用できないかを思索する方法として、日本特有の音で構成されたサイレンの候補のライブラリーを制作しました。蝉が発する超音波、浮世離れしたパチンコのメロディー、青森のイタコの魅惑的な詠唱、茨城県守谷市の剣道部のかけ声と足を踏みならす音。3ヶ月間の制作と収集の中で、際立った候補がいくつか現れていきました。とりわけ梵鐘(古来の寺院の鐘)の周波数を録音するために京都、東京、茨城で約10の仏教寺院を訪れました。《細胞調律センター》では、体験者は偶発的に起こるサウンド・ライブラリー内のさまざまな音の干渉を受けながら、梵鐘の音の「子宮」の中へといざなわれます。(*梵鐘内のまさに中心にいる感覚を再現するようにマルチチャンネルスピーカーを設置。)《細胞調律センター》は、集中して聴くという行為が地震活動を理解するために応用される可能性を持つような社会空間として機能します。

1987年アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれ。2014年カリフォルニア大学ロサンゼルス校デザイン・メディア・アーツ修士課程修了。サウンドや映像を中心に作品を制作。ライブ・パフォーマンスやレクチャーパフォーマンスも行う。私たちが見過ごしがちな自然現象、地球物理学、地質学などの要素をリサーチし、人間以外のさまざまなものと密接な関係性を構築すべく、ヴィジュアル/サウンド作品を制作するという、ユニークで領域横断的な活動を行う。

[主な展示・活動歴]
2017 Recipient of LACMA's Art + Techonology Lab Award
2016 “The Viscous Shape”, with Skaftfell Center for Visual Art & GPL Walker Geology Center, 東アイスランド, アイスランド Collaboration with Hermione Spriggs.
2016 “Balancing the Stone”, Titanik Gallery, トゥルク, フィンランド
2016 “Flatlander”, Bemis Center for Contemporary Art, オマハ, ネブラスカ州, 米国
2015 “Tympanic Tether”, The Santozeum, サントリーニ島, ギリシャ

選考理由
鉱物、竜巻、火山、地熱、アニミズムなどリサーチの主題のユニークさと、最終的な作品形態とのギャップの大きさが俊逸である。そこには知的で理論的な主題を感覚に訴える作品に変換するセンスの良さが感じられる。科学者のリサーチ・アシスタントを務めたり、科学研究機関とのコラボレーションを考案するなど、他者との協働を得意とするように感じられ、アーカスプロジェクトでのレジデンス期間中でも自発的に協働者を見つけ出し、作家本人にとって新たなリサーチ・ テーマを発見するのではないかという期待を抱くことができた。


オープンスタジオに寄せて
タムは自然現象、地球物理学、地質学、動物などをリサーチし、ヴィジュアル / サウンド作品を制作するという、ユニークで領域横断的な活動を行う。

ギリシャのサントリーニ島では、火山活動や、人間や動物の自然災害に対する予知能力、警鐘を鳴らすサイレンに興味をもち、リサーチ・プロジェクト「鼓膜の束縛」(Tympanic Tether)を行った。消防士、警官、鳥の飼育士、救急車の運転手などの協力を得て音を録音し、さまざまな音の集積「サウンド・ライブラリー」を作った。そして、島に固有の新種のサイレン音としてそれらの音源を即興的に流すパフォーマンスを行った。

タムにとっては、音も津波も地震もすべて「波」によるものであり、そこには相関関係があるはずであると言う。今回の滞在では、東京大学地震研究所や防災科学技術研究所の訪問、仏教や神道、民間信仰などと音との関係についてリサーチを行った。同時に、琴など日本の伝統的な楽器にも触れ、京都や茨城で寺の梵鐘の音を、真壁町で梵鐘の鋳込みの音をそれぞれ収録し、守谷市のコーラスグループとワークショップを行うなど、「サウンド・ライブラリー」の音源を増やしていった。

オープンスタジオでは、来訪者は横になってそれらの音源を聞く体験ができる。タムは、ナマズの地震予知能力のように太古から継承され眠っているかもしれない人間の細胞の中の能力を、音を使って呼び起こすことを試みるのである。このように、タムの思考には一見無関係なものの関係性を解き明かそうとする「コネクティヴィズム」的思想が見いだせる。

近藤健一

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2017

フリエッタ・アギナコ&サラ・ドゥムーン〈メキシコ&ベルギー〉

ダニエル・ニコラエ・ジャモ〈ルーマニア〉

カーティス・タム〈米国〉