ステファニー・ビックフォード=スミス / Stephanie Bickford-Smith

滞在制作にあたって

私の制作活動の目的は、科学とユーモアの狭間でバランスを保つ一方で、社会で分断されている人々と面して道徳と倫理に基づく境界を探ることにあります。滞在中には、観察することを通して「自分自身が日本人になってみる」という社会的実験を実践することによって、ナショナリズムと移住との間にある空白を探求します。守谷という地域社会を通して日本を知り、自分の周辺からの影響を受け入れていきたいと思っています。

1989年英国・ヘルストン生まれ、ハートフォードシャー在住。2014年ロイヤル・カレッジ・オブ・アートにてデザイン・インタラクションの修士課程を修了。主な展覧会に「Always Print The Myth」(ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館、ロンドン、2015)、「THE PARTY」( ヴィラ クローチェ現代美術館、ジェノヴァ、イタリア、2014)、「Buy Buy Buy, Sell」( ロイヤル・カレッジ・オブ・アート、ロンドン、2014)などがある。
人が労働や雇用の機会を通して現代社会のなかで役割を模索することや、ある理想へ近づくことの困難さを主題にパフォーマンスや映像作品を制作している。インタビュー、自撮り、行動パターンの分析・図式化、収集物の分類・展示といった手法を用い、自らホテルの客室清掃員になって覆面調査を行うなど、理想と現実の間のジレンマに対峙しながら実体験を物語る。社会に横たわる道徳的・倫理的な境界に挑みつつ、ユーモラスな映像が特徴的な若手アーティスト。

<審査員のコメント>
素性と制作目的を隠してロンドン市内のフードデリバリー業やホテルの客室清掃員として2か月間働く間に撮影した映像を基に制作されたOpportunities in the Margins(2014)の完成度が高く、見る者を魅了する力があった。他の映像作品も一見、体当たりのユーモラスな自撮り系ドキュメンタリーやリアリティTVのような様相を呈しているが、しっかりした方法論を持ち、自身をとりまく社会環境を客観的に観察・分析していることが伝わってくる。他者を理解することや環境に順応することの困難と不可能性を前提とし、大真面目に取り組みながらも、結果的にユーモアに転化される軽妙な作風に好感が持てる。アーカスでは「日本人になる」ためのリサーチを行う提案をしており、どのような展開を迎えるのか楽しみである。

飯田志保子

これまでの作品画像を見る

2015

ティモテウス・アンガワン・クスノ〈インドネシア〉

ステファニー・ビックフォード=スミス〈英国〉

エドゥアルド・カシューシュ〈南アフリカ〉